大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 昭和36年(く)11号 決定 1961年10月20日

少年 N(昭一七・六・二七生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由は抗告人提出の抗告申立書記載のとおりであるから、これをここに引用する。

しかしながら本件記録中の審判調書の記載によれば原裁判所は昭和三十六年七月二十八日の本件審判期日において、抗告人及び保護者実兄B出頭のうえ、審判手続を開き、抗告人の陳述を聴いた後、抗告人を旭川保護観察所の保護観察に付する旨の原決定を面前で言渡して告知し、二過間以内に抗告申立のできる旨および抗告をなすべき裁判所を告げたことを明らかに認めることができる。従つて審判後書記官より渡された通知書を持つて保護観察所へ行き、はじめて保護処分という事実を知つたとの抗告人の主張は到底措信できず、その審判手続には抗告人主張の如き少年法第二二条、少年審判規則第三〇条、第三五条に違反する点は毫も認められず、その他原決定に影響を及ぼす法令の違反が存しないことは、まことに明らかである。

なお、職権をもつて一件記録を精査した結果に徴しても、原決定を取消さねばならない瑕瑾は存しないので、本件抗告はその理由がない。

よつて少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条に従い、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 矢部孝 裁判官 中村義正 裁判官 萩原太郎)

別紙

抗告申立

住所 旭川市○○通○丁目○号

抗告人 N

右抗告人の旭川家庭裁判所昭和三十六年(少)第一一、七四六号道路交通法違反保護事件につき、昭和三十六年七月二十八日告知された左記決定は不服であるから本件抗告に及びました。

原決定の表示

本件 保護観察処分

抗告の趣意

原決定を取消すことの裁判を求めます

抗告の理由

去る七月二十八日本件の審判をうけたが、抗告人及び保護者は審判官の口述した「口答による注意はこれが最後とする。君は未だよく道路交通法を熟知していないと思われるので或はよく知つているのかもしらないが、保護観察所で交通法規の説明会が行われているので、講習をうけるようにしなさい。……」を本件の不処分審判と理解し審判官に謝して審判を終了した。ところが、審判後書記官より渡された通知書をもつて保護観察所へ行き、はじめて保護処分という事実をしつた。

これは、審判中に一度も保護処分又は、保護決定という言葉を耳にしておらず、従つて意見を述べる機会を与へられないまま審判を終了した抗告人及保護者の理解に苦しむところであり、少年法第七条、同第二十二条、少年審判規則第三十条、同第三十五条に違反すると思料し再審の申立をするものです。

右のとおり抗告いたします。

昭和三十六年八月十日

右抗告人 N

札幌高等裁判所 御中

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例